今回は宅配市場で他社を寄せ付けず、急成長している夢の街創造委員会株式会社が運営する「出前館」の状況・業績を見ていきたい。
出前館の歴史は古く、1999年に創業者の花蜜氏が映画「ザ・インターネット」(1995年のアメリカの映画)の1シーンを参考に夢の街創造委員会株式会社を設立。翌年に出前館のサービスを本格開始し、成長してきた。
昨年末時点の加盟店舗数やアクティブ会員数、年間オーダー数は以下のとおり。
まずは出前市場の状況と出前館を利用するメリットについて見てみよう。
出前市場の動向
出前市場についてかなりオンライン化が進んだものの、まだまだ電話での注文が8割以上と主流。ただそんな中でも出前館は圧倒的な利便性を背景に出前市場の約7%ほどのシェアを占めており、オンラインの出前市場の約半分のシェアを占めている。
LINEと提携した「LINEデリマ」も急成長中で、この市場予測よりも上回って成長していく可能性もあるだろう。
ユーザから見た出前館
ユーザのメリット概要
まずユーザのメリットについてはGPS等で位置情報を選択し、近くのお店が一覧でわかるようになっている。さらに直接注文するよりTポイントやクーポンが付いたりお得になる。
ロイヤリティープログラム
利用すればするほど、お得になるロイヤリティープログラムが用意されており、最高ステイタスは年間60回以上注文で「ゴッド」。誕生日特典として1,000ポイントやキャンペーン先行案内、プライベートクーポンの他、シークレット特典を得ることができる。
ビジネスモデル
1注文につき○○円というアフィリエイトモデルとなっている。
(参考)30秒で簡単にわかるスマホ出前館(音声なし)
店舗から見た出前館
店舗のメリット
これまで店舗側はチラシをポスティングし、後に電話注文を受ける形だった。
しかし出前館の場合は注文が入れば、FAXや自動音声コールで店舗に連絡。聞き間違い等もなく、調理・配達・集金に向かうことができる。
加盟店の拡大
出前館の集客力と便利な仕組みで店舗数は拡大。
全国15,800店舗を突破しており、出前ポータルとしては他社を寄せ付けない圧倒的なシェアを誇るようになった。
シェアリングデリバリーの展開
そして現在、業績がさらに拡大するキッカケとなっているのが、シェアリングデリバリーの仕組み。
これまでは出前館はユーザを集客し、注文や決済を代行する仕組みが中心だったが、配達員を持たない店舗に向けて配達員を仲介する仕組みを構築した。
シェアリングデリバリーの仕組み
配達員として現在中心となっているのは朝日新聞社の新聞配達員。2016年12月に朝日新聞社と業務提携し、拠点開設を加速させている。
店舗は新聞配達員と出前館に成功報酬を払うことで、自前の配達員を抱える必要がなく、売上の向上を図ることができる。これは多くの店舗にとっては神サービス。特に配達員を確保することが困難だった、規模の小さい飲食店などもこれで出前館に加盟することができるようになっただろう。
加盟店舗が増えれば、ユーザにとっても嬉しいこと。もちろん配達する新聞配達員も稼働時間が増えることで給料も増えるだろう。
出前館・ユーザ・配達員・店舗のそれぞれにメリットのあるビジネスモデルとなっている。
業績推移
売上は成長し続けており、成長中のシェアリングデリバリーによる1オーダーあたりの単価が上がることで営業利益率は今後ますます向上していくだろう。
中期経営計画の営業利益率の上昇はそこを見込んでか、2020年までに倍増する計画となっている。
株価推移
シェアリングデリバリーのビジネスモデルも評価されてか、昨年は株価が急上昇。
5年前の時価総額は60億円程度だったのが、現在は900億円台と約15倍に成長している。
驚くのはPERが通常企業の10倍以上となっており、投資家からビジネスモデルの競争優位性が高く評価されているのがわかるだろう。
直近の状況
直近発表された資料によると、出前館事業の売上・オーダー手数料が増収。シェアリングデリバリーの拠点開設が毎月増えており、しばらくは成長を続けるだろう。
あえて競合を上げるとすれば、都内ではよく見かけるようになった「Uber Eats」。拡大しやすいCtoCのビジネスモデルでメルカリのように一気に普及する可能性もある。
新聞配達員のようにUberの配達員を活用する手もあるが、仮に活用すれば大きなライバルになってしまうため、その選択肢は取らないだろう。
米国でインターネットの黎明期にYahoo!が検索エンジンとしてまだ知名度の低かったGoogleを採用したことで、その後一気に形勢を逆転されてしまったのはIT業界関係者の多くが知るところだろう。
規模を拡大するためにも新聞配達員以外にどうやって配達員を確保していくのか。出前館にとって戦略的に重要なポイントとなってくるだろう。