炎上した「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」の業績や機能改善ロードマップとは

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最初に大前提として言っておきたいが、サクラバ個人としてはニコニコ動画・ニコニコ生放送・創業者の川上量生氏に対しては基本的に肯定的だ。

チャレンジを多くすれば、確率的に失敗する回数も基本的には多くなる。ただそんな失敗もニコニコ超会議のように赤字を笑い飛ばせる文化がドワンゴにはある。日本の上場企業としては、ほとんど類似の無い期待の持てる企業だと思っている。

出版業を中核とするKADOKAWAと一緒になり、「カドカワ」として再スタートしたことでやや保守的になっているような気がするのが懸念点ではあるが、それでもKADOKAWAはラノベの市場シェアが圧倒的だったり、出版業としては最もドワンゴと愛称の良い企業だろう。

そんな中、カドカワの傘下となっているドワンゴが運営する「ニコニコ動画」の有料会員「ニコニコプレミアム会員」が2017年9月から12月末で14万人も減少し、214万人になったことが2018年2月8日に発表された決算資料で明らかになった。

一体、今ニコニコ動画・生放送に何が起こっており、どのように改善されていくのか。改めて整理してみた。

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ニコニコ動画の衰退

ライブドア事件が発覚した2006年。その年末にニコニコ動画は実験サービスとして同年12月12日に実験サービスとしてプレオープンする。

2007年1月15日にβバージョン移行に伴い、運営元がニワンゴであることが明かされ、ひろゆきが関わっていることも判り、コアなネットユーザから多くの支持を受けた。当時のネットユーザの多くはYoutubeに対抗できる日本の動画サービスはニコニコ動画だと思っていた。

しかし近年、特に若者のニコニコ動画離れが進んでいる。

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引用 カドカワ IR資料より

上記資料の年代別シェアを見れば明らかだが10代のシェアは10.4%に留まっている。今の10代にとって、やはり第1選択肢はYoutubeだろう。有料会員に限定すれば、10代のシェアは微々たるものだと思う。それだけに画質の悪さや閲覧ユーザが多くなれば無料ユーザが追い出されてしまうというユーザ体験は若者にとって最悪だろう。

収益源の要となるニコ動プレミアム会員は2016年の256万人をピークに2017年末には214万人まで減少。実に42万人ものコアユーザが離れているのである。

その減少の理由として多くの人に指摘されているのが、昨年末の炎上騒動。niconicoの新バージョン「く」を発表すると、画質や読み込み速度などの基本的な問題が解決されておらず、ユーザからは批判が殺到した。

しかしユーザの衰退はその前からで1年前の2016年12月から四半期ごとに10万人規模のプレミアム会員減少が続いており、いくらか影響はあったものの、それが大きな要因ではないだろう。

炎上を受けてからのniconicoの対応方針は以下のとおり。

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引用 カドカワ IR資料より

そもそも今、動画サービスは大きな競争にさらされていて、GoogleのYoutubeは子供の憧れの職業である「ユーチューバー」という言葉を生み出すほど強烈なのは言うまでも無いが、日本だけでもHulu(日本テレビ)やFOD(フジテレビ)を含めた各テレビ局の動画配信の他、無料中心でもAbemaTVやツイキャス、ドコモのdTVやDeNAのSHOWROOM。黒船もAmazonプライム・ビデオ、Netflix、DAZNなど、ニコニコ動画が誕生した時とは比べ物にならないほど、競合に「ヒト・モノ・カネ」が揃っている。

そして2月8日に発表されたカドカワの決算説明資料より、やはり圧倒的に競合に太刀打ちできるだけの資本力も不足しているような状況だ。

カドカワのWEBサービス事業の業績

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niconico関連以外のWEBサービス全体の業績だが、売上は有料会員減少とライブの季節性もあり、前年同期比かつ前四半期比で減収。

営業利益はライブの季節性の他、niconicoの新バージョン(く)や新機能への投資費用により過去2年ほどで最大の赤字額となってしまった。

とはいえ、サイバーエージェントの藤田社長が主導する「AbemaTV」の年間約200億円の赤字と比べれば大したことはない。しかしサイバーエージェントのゲーム事業のように「金のなる木」があまり無い、カドカワにとってこれ以上の赤字額を許容することは難しいだろう。それこそ株主からの理解が得られない。赤字額が増えれば、合併により複雑化したと思われる社内幹部からの突き上げもあるかもしれない。

先行投資として大赤字で投資を続けるAbemaTVやDAZNなどの投資の手法はKADOKAWAとの合併で説明責任が重くなった川上氏にとって、そういったアプローチは現状は難しいだろう。こうなると競合他社と同じ土俵に乗るよりも、アイデア勝負。

それだけに昨年末に炎上してしまったniconicoの新バージョン(く)の新機能重視のアプローチもわかる。

ただ多くのユーザから批判を受けて、昨年12月21日に行われた取締役会で代表取締役会長だった川上氏は退任。今後は代表権を持たない取締役CTOになる。niconicoの強化はもちろん、AIや教育事業などの新規事業開発に注力するという。

そして今年になって改善スピードは上がっている。「ニコニコ動画」で多くの非会員ユーザにとって不満だった会員登録やログインがない状態でブラウザからは動画再生できるという機能が2018年2月28日から可能となった。今後は「ニコニコ生放送」やアプリでも非会員での閲覧可能となる対応を進めるという。ちなみに「コメント投稿」「マイリスト追加」などの機能は会員登録・ログインが必要だ。

ブロガーにとってもYoutubeの動画は紹介するものの、ニコニコ動画は紹介しても多くのユーザが会員登録しないと閲覧できなかっただけに紹介しづらかった。

サーバ負荷が高まるという問題はあるかもしれないが、今後は外部からのトラフィック増加という集客面でも期待できるだろう。

まずはユーザからの要望が高かった画質改善や非会員閲覧などに加え、当初2月28日から開始予定としていた「nicocas」(ニコキャス)や新バージョンの「niconico(く)」(ニコニコクレッシェンド)は機能改善優先のため延期。ただ今後対応予定としている。

最後に発表された「ニコニコ動画」「ニコニコ放送」の機能改善ロードマップは以下の通り。

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多くの機能改善は競合のYoutubeやAbemaTVなどと比べると当たり前のレベル。

ここからniconicoが巻き返すにはやはり新機能が必要だろう。予定されているのは以下の通り。

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賛否両論あると思うが、好調だったニコニコ動画の風向きが変わったのは2013年頃、運営会社だった「ニワンゴ」の取締役をひろゆき氏が辞めたあたりから徐々に始まったように思う。それまでは競合を出し抜くような企画力があったかもしれない。

もちろん結果論だが、後にひろゆき氏は辞めた理由についてドワンゴの会長だった川上氏と社長の荒木氏に「いろいろめんどくさいんで、辞めてもらえない?」と言われたからだそうだ。

先ほども言ったとおり「ヒト・モノ・カネ」が揃った競合に立ち向かうために、ドワンゴの現状からすると「ヒト」の企画力のアプローチではないと太刀打ちできない。KADOKAWAの版権力である「モノ」のアプローチもあるかもしれないが、競合のオリジナル作品の制作費や版権を買ってくる資本力には太刀打ちできないだろう。

創業時のゲーム中心から着メロ・うた、動画などと立て続けにヒット事業を生み出し、さらにはトップクラスの出版社KADOKAWAとの合併も果たした川上会長。

この苦境を今年、巻き返すことができるのだろうか。

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